然別湖と糠平湖 山湖を巡る十勝の旅

山深い高原の湖である然別湖、その名も「源泉」を冠した糠平源泉郷のある糠平湖、そして十勝平野のまっすぐな道。この三点セットを味わえるはずの道が今回の100km弱のコースです。

当日は札幌を早朝に発ったのですが、流石に十勝は遠い。出発地点の瓜幕道の駅に着いたのは殆ど9時でした。ここの道の駅は、近隣の豪華版に比べると可愛い作りなのですが、本格的な馬場が併設されていて乗馬競技も出来る様になっています。そういえばこの辺りは乗馬が盛んで、道路に馬横断注意の珍しい標識が見られます。普通に馬に乗って道を歩いているのは他でははあまり見られません。さていつもの様に自転車を組み、雨の備えや修理セットやらを積み込むとロードバイクとはいえ結構な重さです。毎度の事ですがこのコースもまともな補給地点は上士幌まではなしと言って良いです。然別湖の湖畔と糠平源泉郷には土産物店や自販機が若干あるという程度です。おまけに然別湖付近は一部を除き携帯圏外ですので一人で走る私の様な者は万全の装備必携というわけです。

瓜幕からわずかに北へ進むと道は右へカーブします。髙橋はるみ知事揮毫の石碑があります。ここを左折して連絡路に入ると程なく道々593号に行き当たります。ここを右折して然別へと進みます。左右には自衛隊の演習地が拡がり時々遠くで大砲の音が響きます。やがて道が二股に分かれます。直進する細めの道は菅野温泉へと続きます。右が然別湖への道。じわじわと高度が上がり始めるのが分かります。やがて川から離れると本格的な山登りとなり、ひたすら我慢が続きます。途中扇が原展望台では先ほど抜けてきた自衛隊の演習地が眼下に広がり、大砲の発射と着弾が見えることがあります。発射の煙、着弾の粉塵、いずれも見えてから音がするまでしばらくの間があります。大砲の弾が音より早いことが実感できる貴重な場所です。大砲に狙われたら発射音が聞こえる前に自分に当たっていると言うことですね。恐ろしいことです。ここを過ぎると傾斜は緩くなり山肌を巻く様に続いて白樺峠に至ります。峠には目立つ看板はなく、バス停の表示でその名前がかろうじて確認できます。

峠からは一気の下りとなります。道は細めで少し荒れた感じもしますが、交通量が少ないし快適な下りが楽しめます。駒止湖が右にチラリと見えたりします。ナキウサギの写真を狙っている人もいます。やがて然別湖が姿を現します。「山の寂しい湖に、、、」という歌が思い出される神秘感が漂います。

程なく湖畔の温泉街が現れます。現在稼働中の温泉宿は一件のみ。最も大きかったホテル福原は営業譲渡して休館中のままでした。ここに来て風がやたらと強いことに気付きました。サイクルラックに引っかけた自転車が大きく揺れています。大して用もないので早々に先を急ぎます。湖畔の曲がりくねった道は更に交通量少なく路面もまずまず。道は狭いですが快適。然別湖の野営場を過ぎるとヤンベツ川沿いに若干上り基調となります。やがて右に山田温泉の建物が見えてきます。かつてはホテル福原が運営していたこともあったのですが、そのホテル本体がなくなってしまいました。ここしばらくは夏も開けていない様子で段々と廃屋化して来ているのが気になる所です。温泉は素晴らしいのですから何とか再開してほしいものです。この後も暫くヤンベツ川沿いを登り、最後の幌鹿橋を渡るといよいよ尾根にとりつきます。幌鹿峠の始まりです。何度かカーブを切りつつ高度を稼ぐと幌鹿峠に至ります。こちらは木の看板がしっかりとあります。幌鹿峠の下りは典型的なワインディングロードとなっていて楽しめます。糠平源泉郷ギリギリまで傾斜地が続き、止まれ看板ギリギリまで急勾配でブレーキ目一杯でやっと停車する感じでした。

糠平源泉郷は数軒の温泉宿があり、食堂やカフェもほんの少しありますが、コンビニなどはナシです。市街地の中心部が芝生の公園になっていて無料の足湯もあります。今回行ったときには何と公園のど真ん中で鹿が芝草を食べており近づいても逃げませんでした。公園内には「コヤカフェ」というコーヒースタンドの様な、文字通りの小屋があり、「鹿さんブレンド」というのがありましたから、あるいはこの鹿にちなんだものか。となりには「熊さんブレンド」というのもありました。もしかして熊も来るのか?

糠平湖はダム湖ですので湖としての風情は今一つです。この先は暫く下り基調の道が続きます。あまり快適ではないトンネルをいくつか抜けると音更川に沿って下って行きます。音更川の急流が削り出した渓谷が美しい。やがて平野に出ると、先ほどからの強い風をもろに横から受ける形となりました。何処までもまっすぐな十勝の道です。同じ方向からの風を浴び続けハンドルがふらつきます。この間商店など何もなし。自販機が出てくるのは上士幌の少し手前、萩ヶ岡という場所まできてやっとです。ここの商店の陰で飲み物を飲んで一休み。程なく上士幌です。上士幌はそれなりの町で、ここから国道241号が足寄方面から合流してくると交通量は一気に上がります。おまけに大型トラックが随分と多い。そのためトラックが横を通ると吸い込まれる様な横風に翻弄されます。更に悪いことに、路面の轍が深い。うっかり轍にタイヤを取られると転倒してしまいます。加えてこの日は強い横風を喰らいました。路側帯も広いとはとても言えません。不快この上なし。ようやく着いた上士幌の道の駅は大変立派でした。フードコートが凄いです。新形コロナの影響で皆マスクしてますが、フードコートではそうは行かず、混み合った道の駅内は一寸嫌な感じ。早々にここを後にしました。

次の町である士幌まではわずか7kmとすぐに着いてしまいます。ただし先ほどからの嫌らしい道はそのまま続きますから、やはり不快この上なし。こちらの道の駅「ピア21しほろ」も申し分ない立派さでした。こちらは物産コーナーが凄い。やはり人も多くやばい感じは同様。早々に退散です。

ここで右折すれば、最後の直線となります。18km程度ですから軽いか、と思っていましたが、どっこいそうは行かなかった。改めて確認すると結構上っています。風も真正面に受ける形となってしまいました。漕いでも漕いでも前に進まない。山登りの後なので疲労もじわじわと効いてきました。夕陽が日高山脈に落ちて行くのを正面に見ながら気ばかりが焦りましたが、それでも何とか明るい内にスタート地点にたどり着くことが出来ました。

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