JR北海道の一日散歩きっぷを使った、花人街道の旅

JR北海道には一日散歩きっぷというありがたい切符があります。土曜と日曜しか使えませんが、札幌近郊(といっても相当に広い範囲まで乗れます)の普通列車が二千円ちょっとで一日乗り放題というお得な切符です。早起きをする努力が出来る人であればこれを利用して普通では出来ない面白いコース取りが出来ると思います。ただこの切符を利用するにはいくつかの制約があります。まず発券場所をご覧になれば分かるとおり、買えるのは札幌近郊に限られることです。それと発券は当日のみであり、事前に買っておくことが出来ません。 従ってこれを利用して土曜日に田舎へ出かけ、翌日の日曜にはまた利用して帰ってくるという技は使えません。 また早朝の札幌駅などはみどりの窓口が開いておらず、自動発券機で買うほかはありませんが、これが慣れないとちょっと分かりづらい。 札幌駅始発の列車は6時発旭川行き普通列車ですが、発券機が動き出すのはこのわずか20分ほど前です。 尋ねる駅員も早朝はほとんどいないので買う方法が分からないとこの20分が短く感じられてイライラします。前日にでも予行演習しておいた方が無難です。また利用のルールがこれまた分かりづらい。特に分かりづらいのは、新得から新夕張間には普通列車がないため特例として特急の自由席を使えるのですが、うっかりそのまま特急に乗り続けると、乗車駅から下車駅までの全ての特急料金(乗車券と特急券の合計)を払わなくてはならなくなることです。例えば占冠から新夕張まで乗るつもりで、うっかり乗り越して南千歳まで行ってしまった場合は占冠から南千歳までの特急料金全額を請求されるということです。新夕張から南千歳までではないわけです。おまけに北海道の普通列車は場所によっては一日に数本ですから時刻表を入念にチェックしてから旅に望む必要があります。失敗すると帰ってこれなくなります。

富良野駅前のへそまつり人形

富良野駅はシーズンオフで人もまばら

さて今回は富良野から金山峠を越えて占冠に至る、通称「花人街道」をたどってみました。使った自転車は素早く折りたためる上にパンクした場合などの整備性がよく、走行性能も程々あるBD-1です。

札幌駅には早朝5時半位に着きました。駅近くのコンビニで朝用のお握りを買い込んでかじりながら発券機が動くのを待ちます。日曜の札幌駅はこれから旅行に行くらしき人と前夜に飲み過ぎてこれから朝帰りという雰囲気の若者達で早朝から結構なにぎわいです。お握りを食べ終えてトイレを済ませます。札幌駅のトイレは随分ときれいに整備されました。乗り込んだのは札幌駅を最も早く出る旭川行き6時発普通列車です。列車はそれほど空いてはおりませんが大抵は座れます。自転車を邪魔にならないように抱えて乗り込みましょう。江別を過ぎる頃から朝帰りの人たちは降りてゆき車内はかなり空いてきます。途中で地元の中高生がクラブ活動かなにかでしょうか、乗り込んで来ますがそれも程なく降りて行きます。やがて滝川で乗り換えます。富良野行きの快速です。こちらは富良野観光の繁忙期には結構混み合いますがこの日はまだ5月でラベンダーも咲いていないので乗る人はまばらでした。9時14分に富良野に到着します。

芦別岳をバックに菜の花が咲く

芦別岳を間近に望む

富良野駅で自転車を組み立て、駅からまっすぐ南西に延びる商店街を行きますと、道々985線「山部北の峰線」に入って行きます。程なく空知川に掛かるきれいな橋を渡ります。五条大橋です。山部までのこの道は路面の荒れも少なく、右手には名峰芦別岳が間近に望める気持ちの良いルートです。交通量も多くありません。

山部で道はいきどまりとなって(実際はまだ細い道が続きますが無視します)左折します。これを右折すると芦別岳の新道登山口に至ります。一気に下って国道38号と237号重複区間と合流です。車の量はそれなり

ログハウス風トイレ

樹木園付近のトイレ   背景は芦別岳です

に増えますが、極めて不快なほどではないです。この交差点付近にはコンビニが二軒あり、これがこのルートの最終補給地点です。道は南下して山部大橋を過ぎると、東大樹木園に入って行きます。ここにはきれいなログハウス風のトイレのある立派な駐車場があります。これを過ぎると道はやや上りとなって、程なく金山の分岐に至りますから右折して国道38号と分かれ237号に入ります。交通量はぐっと減って再び快適な旅となります。上り基調の畑中の道をのんびり行くとやがて金山が最終人家ですが満足な商店はありません。金山駅はひっそりとした味のある駅舎です。

金山駅駅舎

金山駅は静かな無人駅

ここからいよいよ金山峠越えとなります。峠としての規模はたいしたことはありません。最後はおきまりのトンネルとなっており、峠らしい展望台などはありません。占冠側に抜けけると、後は一気に峠を下り占冠に至るだけです。開拓農家が引き上げた跡地が転々とあって、この地方の厳しさを思い知ります。途中に湯の沢温泉という一軒宿の温泉があり、ここにはラーメンなどを出す食堂がありますが、それ以外は自販機も含めて補給場所は全くありません。というか人家がありません。私が通った時点では峠付近は携帯の電波も圏外でした。

金山峠手前の峠の看板

峠の手前にはこのような看板が

今回は占冠駅から一日散歩きっぷを使うことが目的でしたので、とりあえずここが終着点と言うことになります。12時台のスーパー十勝6号には間に合わず、次の14時47分のスーパー十勝8号を待つ間に道の駅まで往復してみました。往復3km程度の道のりですが占冠ではここ位しか食べ物にありつける場所がありません。駅前にある物産館もあるのですが、日曜は食堂が休みでした。ともかく静かな町です。占冠駅で1時間近く昼寝をしましたが、この間待合室には誰一人おらず時計の音が響くばかりで、文字通り「都会の喧噪を忘れる」駅です。実は占冠駅は無人ではないのですが、改札というものがありません。列車の到着時刻が近づいて

湯の沢温泉

湯の沢温泉は静かな雰囲気

も何も起きず、不思議に思って事務室の女性に尋ねると、列車に乗ってから車掌が検札するのだそうです。うっかりすると乗り遅れます。これが普通列車なら分かりますが、特急ですから驚きです。確かに乗り込んだのは私一人で、乗り込むとすぐに車掌さんがやってきました。切符を見せて次の新夕張で降りることを告げます。自由席は一番前でした。

汽車に乗ったら忘れずに一度新夕張で下車しなくてはなりません。これを怠ると途端に全ての区間の特急料金(乗車券も含めて)が請求されま

占冠駅

占冠駅 海抜表記が珍しい

す。石勝線の列車が全てかどうかは分かりませんが、この列車は出入り口の電光掲示板に次の駅まであと何キロ、とテロップが流れますので、新夕張駅が近づくと分かるようになっています。ここで下車したのも私一人でした。駅はほぼ無人(一応人はいるが窓口が開いていない)であり、従って切符のチェックもありません。あとはお好きに家まで帰れば良いのですが、この日の私は追分まで更に走って普通列車に乗り継ぎました。この時期の追分付近は菜の花がきれいです。もう走りたくなければ新夕張駅で1時間以上ゴロゴロして(駅前には道の駅がついたスーパー

追分付近の菜の花畑

追分は菜の花が盛り

マーケットの「メロード」があります)、16時57分に夕張駅から来る次の普通列車を待って南千歳まで出ることができます。この先は適当な快速か、のんびり行きたければ普通列車で札幌へ戻ることが出来ます。

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